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IETM in リュブリャナ(スロヴェニア共和国)
◎正式名称:IETM Spring Plenary Meeting
◎開催地:Ljubljana, Slovenia
◎開催日:2008年5月15~18日
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IETM(International Network for Contemporary Performing Arts)の春の総会(Spring Plenary Meeting)に参加しました。

IETMは2年前までインフォーマル・ユーロピアン・シアター・ミーティングという名称でした。いわばヨーロパの同時代の舞台人たちの非公式の組合みたいなもので、総会は春と秋の2回。その時々のさまざまな問題を議論しています。前回のTPAMではサテライト・ミーティング(IETM@TPAM)を実施し、それを機会にTPAM事務局を運営しているPARC(国際舞台芸術交流センター)もIETMメンバーになりました。

今回の参加は東京ミーティングのフィードバックを聞きつつ、(one of the best meetings と言って頂けました。ほっとしました)今後の関係をどう続けていくかなどをIETMの事務局と話してきました。

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今回の総会のテーマは「Rehearsing freedom 2008」。この意味深長なテーマは未だ存在する、欧州各国の文化的、社会的、そして経済的な違いを反映しています。特に今回の実施会場のある都市リュブリャナは旧社会主義国に属し、1990年代の紛争を経て現在に至る国の首都ですが、同じ事情を分かつ周辺諸国の参加者が多いことがテーマに反映したようです。詳細ブログラムはこちら

プログラムはミーティング(パネルルディスカッション、20人前後が参加して各々のテーマを議論するワーキング・グループ)と観劇の2つのほか、みんなで食べたり、飲んだり、(ナント!)ピクニックをしてコミュニケーションを図るプログラムの3つが柱です。もちろん総会ですから、メンバーが参加して今年度予算や理事承認の会もあります。プログラムがたくさんあり、しかも重なっているため、すべてに参加することはできませんでしたが、筆者が参加したプログラムを中心に日を追ってご紹介したいと思います。
 

■ 5月15日(1日目)

14時から、主会場であるスロヴェニア民族博物館で参加登録が始まりました。ここで、パスやプログラムをもらいつつ、参加の予定を決めます。また、だいたいの人がこの時間に集るので、懐かしい人々との再会を喜びつつ情報交換をしている姿が其処ここで見られます。この登録カウンター周辺がミーティングポイントになっており、併設されているカフェにも人々が集り個別のミーティングをしています。
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主会場の入り口付近
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登録風景

午後にいくつかミーティング・プログラムがあり、「Rehearsing Freedom with Your Team」というプログラムに参加しました。モデレーターはパスカル・ラインハルトさん(Ms. Pascale REINHARDT / Coache and Researcher, Société Française de Coaching)。朝食でお目にかかった時、リュブリヤナに来る直前にもパリで同種のワークショップを実施されてきたと話されていました。

参加人数は15人くらいです。若きプロデューサーを中心に、彼らの仕事相手となる劇場担当者やフェスティバル・ディレクターなどとどうやって上手にコミュニケーションをとるか、彼女なりの方法論を伝えてくれました。面白かったのが全員で歩きながら、彼女の指示に従い、「すれ違い様に手を触れる、ぶつかる、後ろ向きで歩く、目をつぶって歩く、目を見て手を組んだり、体を互いに手で揺さぶったりする」というワークショップで、実施後、それぞれがどんな風に感じたかを話すというものです。「ちょっと触れる時よりぶつかっていた方が(ちょっと)不快でもあるが、より接近したようにも感じる」という感想が出ました。こんな事をしながら、人と人が出会い、一つの仕事を超えていく内容をマッピングして説明してくれます。こういう一見ナイーブなプログラムがあるのもIETMの魅力です。出会いの基本を再考させてくれるプログラムでした。

その後、市の主催でレセプション。市長とIETM会長のヴィルヴェ・スーティネン氏(Ms. Virve SUTINEN / President, IETM)の挨拶後みんなで談笑。この日の夜、メインプログラムとオフプログラム合わせて11本ある舞台の中から、私はMala Klineの『DÉBUT – In Memory of Coming』と、Maja Delakの『SERATA ARTISTICA GIOVANILE』を鑑賞。会場は主会場のうちの一つです。入り口に機関車がありました。観劇後は深夜のミーティングポイントに指定されているバーにみんな移動します。大変タフな人たちです。
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レセプション
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公演会場:Elektro Ljubljana 
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ナイト・ミーティング・スポット



■ 5月16日(2日目)

9時半からオープニング・セッションが始まります。文化大臣の挨拶されている間(もちろん大変意義深い内容です)、地元のダンサー2人がパフォーマンス、というか日々実施している訓練のデモン・ストレーションのようなものを壇上脇で実施、皆それを観るようになっていました。最初は少し不思議な感じで心の狭い筆者は「ダンサーを搾取」とも感じましたが、だんだん彼らの方に皆の視線が移っていくように感じます。せっかく話しをされているスピーカーの影が薄れていきました。ところで、ダンサーの動きは舞踏のそれに通ずるものがあると感じ、そのダンサーに伺ってみると、「とても影響をうけている」と話してくれました。

その後パネルディスカッションが2つありました。どちらも、政治的ターニングポイントであった1968年以降の40年を検証しつつ、今同時代の舞台芸術が何をすべきか、ということをテーマに、一方は制度的なフォーカスを、他方はより個人的なレベルにフォーカスを置くという、どちらも筆者には大変興味深い内容です。分身の術というのはこういう状況で夢想するのだと思いました。

まず、制度に焦点を当てているミーティングに参加しましたが、パネラー全員の話が終わったあと他方に移動。こちらはより「インフォーマル」に議論。アーティストが、民主主義を大義としつつも、実際には商業的な成功を得るのが難しい前衛芸術、政治性の高い芸術がどんどん実施できなくなっている実情を話しています。会場の中に深く共感する人が複数いて、質問なども活発でした。一方で政治性という定義の問題が浮上します。激動の40年。過去ではなくて同時代と実感します。

昼食をはさみ午後のセッション。アーティストのプレゼンテーションを含めると、同時に7つのプログラムが重なっています。どれも興味深くて困りましたが、筆者は自身の仕事と直接性が高いと思った「Temporary Platform for Contemporary Platform」に参加。モデレーターはIETM@TPAMでもスピーチして頂いたブラジルのナイーゼ・ロペスさん(Ms. Nayse LOPEZ / Dance Critic and Curator, Panorama Dance Festival)。

スピーカーの中にはこれまたIETM@TPAMに参加下さったシンガポールのタン・フクエンさん(Mr. Tang FU KUEN / Critic and Researcher)がおられます。この会議だけ、欧州以外の場所が対象となっていました。ダンス批評家のナイーゼさんが運営参加されているRAFTというウェブサイトがあり、フクエンさんも共感して運営協力されているそうです。このセッションにはロンドン在住のインドネシア人研究者も参加予定でしたが、ビザがおりず参加できなかったとの事、残念です。
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左から二人目がナイーゼさん

このセッションでは、言語の壁を越えるためにもウェブ上のプラットッフォームが重要であること、それを実際に運営していることを、資料を使い教えて頂きました。アジアで仕事されているスピーカーがもう一人いたので、話はアジアのことにもなります。その度、日本のウェブページに、いかに日本語以外の言語で書かれたサイトが少ないかを指摘され、考えるところ多く、興味を持ってもらってもアクセス出来なければ「事」は始まらないと痛感。最後にAsia-Europe Foundationのカテリン・ヴェストラット氏(Ms. Katelijn VERSTRAETE / Project Manager, ASEF)が最近開設された「Culture 360」を紹介してくれました。さまざまな形でリンクできるようなので是非のぞいてみてください。

その後19時からやはり観劇。筆者はIrena Tomažinの『CAPRICE(RE)LAPSED』を観ました。Maja Delakの『EXPENSIVE DARLINGS』も観たかったのですが、狭い会場でチケットが少なく予約できず。しかし、IETMの事務局長マリー・アンさん(Ms. Mary Ann DeVLIEG)とゆっくりミーティングをし、思い出に残る時間になりました。その後、みんなはもちろん深夜のミーティングポイントに参加。いやはやタフな人たちです。


■ 5月17日(3日目)

10時半からミーティング。二つのパネルディスカッション「Be Creative! Be Free! Be…an Artist!」、「Bothering Art, Bordering Freedom」(どちらも興味深いのですが)のうち、前者に参加します。モデレーターのズヴォンコさん(これはニックネームで本名はズヴォニミール・ドブロヴィッチ=Mr. Zvonimir Dobrovic)はクロアチアの首都ザグレブでクィーア・フェスティバル(Queer Zagreb)を実施されています。2005年に横浜ダンスコレクション参加のために来日され、お目にかかっていました。
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中央がズヴォンコさん

4人のパネラーが本テーマについてそれぞれの意見を述べ、すぐディスカッションが始まります。議論の中心は、アーティストもしくは舞台人がいかにお金がないか、そしてそれをどう考えるのか、ということをめぐってになってしまいます。「もちろんお金は必要だ、いや好きだ」という方向から議論しても愚痴大会になってしまい前向きになれません。しかしそれでも多くの方が発言するのは現状がいかに厳しいかということが共有されているからでしょう。

昼食をはさんで午後の会議。昼食時のミーティングが長引き少し遅れてワーキング・グループ「ARTIVISM」に参加。アート(art)とアクティビスム(activism=積極行動主義)を合わせた造語でしょうか。パネラーの中には長年ローザスのジェネラル・マネージャーをつとめ、ブッリュッセルの重要な劇場のひとつKaaitheatreの次期ディレクターに就任するギィ・ジペン氏(Guy Gypens)などがおり、(おそらく)予想以上に人が集まり、席が足りない程です。

前半、3人のパネラーが自身の劇場、フェスティバルのプログラム方針や状況を説明した後、議論移ります。このセッションの副題は「Political Engagement in Art, Artistic Action in Politics」です。数でいえば多数派の欧州諸国が複雑で困難な政治状況にあるということがこの議論の背景にはあります。それらを乗り越えてフェスティバルなり劇場の運営をしている、というところで、1960年代から活躍されているアーティストが意義を申し立てます。「アートと言うのであれば、マイノリティを救うなどの具体的なことに貢献をせよ」というのです。深く共感する人が複数名。この議論を通じ、「自国」の問題だけを見ていては視野が狭くなる、というぐらいのことしか勉強していない筆者の常日頃の勉強不足を反省しつつ。

その後IETMの通常総会です。予算、新理事、2008年の活動などを役員が説明、質疑応答のあと承認。
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総会の風景

ふと自分が座っている席の前のテーブルを見ると、ショッキングな資料がありました。チェコの首都プラハにある劇場「アルハ・シアター(ARCHA Theatre)」のディレクターからIETMの事務局長に当てた手紙です。昨年から政府の文化に対する方針が大変厳しくなり、クラシックな劇場やフェスティバル以外は存亡の危機にあり、アルハも瀕死の状態だというのです。

この劇場は冷戦前から勇気ある優れたプログラムを実施され、2007年にはディレクターがTPAMに参加されレクチャーをしてくださいました。18,500人が今回の文化政策に反対を訴える署名をされているそうです。人口を考えれば実に多い数です。しかし方針は未だ変らず。アルハ・シアターを含む多くの劇場・フェスティバルを守るため、多くの協力が必要とされています。署名はオンラインでチェコや欧州だけでなく世界中からできるようですが、残念ながらチェコ語のみ(www.tydenikA2.cz/petice)。こういった深刻な事態が、現実に、今、起こっていることを背景に、本会議は全編を通じ芸術の自由と政治について議論されていたと痛感しました。

その後、観劇そして、クロージングパーティが朝の4時まで。いやはや本当にタフな皆さんです。


■ 5月18日(4日目)

いよいよ最終日です。11時からクロージング・セッション、もとい、クロージング・ピクニック(!)です。リュブリャナは欧州の中でもとりわけ美しい初夏が有名だそうで、屋外でクロージングが実施されました。会場はティヴォリ公園(Tivori Park)。郊外にあります。今回の主催者への謝意と秋の総会(11月6~9日、チューリッヒ)の報告&宣伝です、おそらく。というのは、この日の昼に帰国するメンバーとミーティングがあり、残念ながら参加できませんでした。空模様が心配されていましたが、終了予定の14時まで雨もふらず、よかったです。そして、終了を待つかのように土砂降りになりました。

このあと、観劇プログラム数本。各々公演会場に向かいつつ、今回の総会は幕を閉じたのでした。

(文責・○)
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by welcome-tpam | 2008-05-28 10:39 | IETM ミーティング
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