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Meet at TPAM vol. 2: 劇団モムコル(韓国)@コンカリーニョ(札幌)
北海道の洞爺湖ではサミットが開かれるなか、7月4日・5日の両日、札幌市にある生活支援型文化施設コンカリーニョでは熱い舞台が上演されました。コンカリーニョが韓国から招聘した劇団モムコル(Corporal Theatre MOMGGOL)の作品『リアカーティジボジダ(Handcart, overturned)』です。

今回、上演となったきっかけは、2007年10月、ソウル舞台芸術見本市(Performing Arts Market in Seoul 以下、PAMS)において行われた韓国の12の芸術団体と日本の6人のプレゼンターとのミーティングでの出会いでした。12の芸術団体の1つに劇団モムコルが、6人のプレゼンターのなかにコンカリーニョのプロデューサー斎藤ちずさんが参加されていたのです。

■7月4日(金)
梅雨空のなか東京を出発しましたが、札幌では雨にも降られずに無事、旅館に到着しました。

生活支援型文化施設コンカリーニョは札幌駅から2つ目の琴似駅にあり、新千歳空港から直通電車で行くことができます。琴似は再開発が行われて、駅前には高層マンションが建てられ、その横に駅と直結した低層の商業施設が入っている建物があります。この商業施設のなかにコンカリーニョも入っているのです。
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琴似駅周辺の様子。駅の反対側にコンカリーニョがあります。
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コンカリーニョ入口前の広々としたスペース。
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コンカリーニョの看板です。

私にとって、コンカリーニョは遅まきながら初めての訪問でした。琴似駅に直結していて立地条件も良く、劇場の入り口近くの広々とした空間も素敵です。開場までちょっと時間がありましたので、周辺を歩いてみたところ、駅にはもちろんですが、至るところにコンカリーニョへの行き方と劇団モムコルのチラシが貼ってあり、日頃からきめ細かい情報告知をされているのだなと感じました。

開場時間の少し前には、既にお客様がちらほら。今日から3日間にわたって開催される文化経済学会へ参加される方も東京から何名かいらしていました。
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受付の様子。斎藤ちずさんがお客様をご案内しています。

コンカリーニョのウェブサイトによると、「1970年代の貧しいながら、明日への大きな希望を持っている時代を背景に、リヤカーやふとんなどのオブジェをモチーフに、言語に頼らない身体表現で物語を構築。ストーリーの演劇的構造を最小化し、観客と役者が心で出会う想像の地点を強調して、動きから生まれる詩と言葉の中から描き出される想いの躍動性を引っ張り出す」とあります。
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劇団モムコルの『リアカーティジボジダ』というタイトルは『リアカーひっくり返る』という意味だそうですが、4人の出演者はリアカーを完全に乗りこなし(通常、乗るものではないですが)、1台のリアカーが時には家になったり、遊び道具になったり、リアカーそのものとして使われたりと、様々なイメージを受け止めました。

また、劇中には、りんごを使ってのジャグリングのシーン、靴磨きのシーンでは観客を舞台に上げたりするなどのコミカルなシーンがある一方で、ひとりひとりの持つ怒りや哀しみも合わせて描かれているように私は感じました。観終わったのち、この作品に出会えて嬉しい気持ちになりました。
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この作品の重要な位置を占めるリヤカー。終演後も舞台上に置かれていました。

終演後、観客の興奮が伝わってくるように、会場の拍手はずっと続きました。
その後は、劇場内でレセプションが行われ、手作りのお料理がずらりと並びます。出演者、演出家も出てきて、観客と歓談をしながら楽しいひと時を過ごしました。レセプションの後は打上げが続き、さらに作品の話を伺うことができました。
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終演後、コンカリーニョでのレセプション。写真に写っていませんが、手作りのお料理、美味しかったです!

■7月5日(土)
快晴です。3年前の同じ時期に札幌を訪れた経験で長袖を用意してきたものの、今回は31度にもなる暑さ。すっかり洋服を間違えてしまいました。

前日でも少し触れましたが、今日は北海道大学をメイン会場として開催されている文化経済学会のシンポジウム「地域の繁盛は文化から~文化と地域の持続的経営を求めて」に参加です。伏島プランニングオフィス代表の伏島信治氏がコーディネーターとなり、アルテピアッツァびばい理事長の磯田憲一氏、東川町長の松岡市郎氏、札幌国際短編映画祭のプロデューサー久保俊哉氏、そしてコンカリーニョ理事長の斎藤ちず氏の4名のパネリストとコメンテーター小林真理氏のお話を伺います。

なかでも私にとって印象的であったのは、アルテピアッツァびばいの活動です。アルテピアッツァびばいは、美唄が炭鉱町としての歴史を終えた後、廃校となった小学校の跡地を、彫刻家である安田侃氏の作品を配しながら、16年かけて整備されたそうです。写真で見る限りですが、とても穏やかなたたずまいで、小学校であった時の空気と安田氏の彫刻がごく自然に調和していると感じました。

アルテピアッツァびばいには「こころを彫る授業」というプログラムがあり、ひとりひとりが石と向き合いながら彫刻を彫るのだそうです。このプログラムのように、アルテピアッツァでは自分自身を見つめ直す時間を過ごすことができるとのことでした。

私は国内のさまざまな地域に舞台芸術作品を観に行くことがあります。訪れた回数は決して多くはありませんが、作品を観に行くために知らない街を訪れることはとても楽しみです。初めて訪れる街への好奇心でもありますが、その街に住む人々と話したり、実際に街を歩き、見ることは、劇場のミッションや企画の背景について知る手助けのひとつになり得ると考えるからです。

都内の劇場のように、さまざまな場所から観客が訪れる劇場も多くあると思いますが、その地域と劇場との関係は切っても切れないものです。今回も、コンカリーニョを訪れて、自分の想像を超えて、大勢の地域の方がコンカリーニョの活動に関わっているのだと知りました。これからも自分の足で街を訪れることを大事にしていきたいと思いながら、シンポジウムを聴講しました。
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シンポジウムの様子。向かって右端がコンカリーニョの斎藤ちずさんです。

シンポジウム終了後、TPAM08にご参加頂いた札幌市教育文化会館の大野典子さんにお会いしました。

札幌市教育文化会館は地下鉄東西線の西11丁目の駅から徒歩5分。大通り公園から続く緑が目の前にある閑静な場所にあります。

まずは大野さんから教育文化会館で実施されている事業のお話を伺いました。お話のなかでもとりわけ興味をひいたのが、北海道出身の人形師である沢則行さんとチェコのオストラヴァ人形劇場(Puppet Theatre of Ostrava)の公演でした。沢さんの公演は日本でも各地で上演されていると思いますが、ちょっと異なるのは、円山動物園と協力し、動物園で沢さんの公演を実現、そして、沢さんとオストラヴァ劇場とのコラボレーションという点だそうです。

チラシを拝見しますと、裏面にオオカミの写真が! 今回、動物園での公演が実現した背景には、新しいオオカミの飼育舎がオープンしたということあるそうです。さすがにオオカミ舎での公演というわけにはゆきませんが、動物園のホールで、普段、あまり人形劇に親しみがない人たちもいらして、その後に行われたオストラヴァ人形劇場の公演にも来場されたとのことでした。

お話を伺った後は、大ホール(約1,000席)、リハーサル室、研修室を拝見しました。数年前、教育文化会館は改修工事をされたということですが、趣のある会議室やワークショップなどもできる新しい研修室が上手く融合していると感じました。
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札幌市教育文化会館です。

■7月6日(日)
本日も気温は31度ということ。生地が薄いとはいえ、長袖は暑いです。
昨日に引き続き、文化経済学会に参加します。本日からは分科会ということで、文化政策に関する発表に参加しました。

現代美術アワードの変遷と展開、ケネディ舞台芸術センターにおける国際プログラムに関して、出版における構造変容と公共政策、国際機関が提唱する都市(地域)文化政策についての発表でした。

ケネディ舞台芸術センターの国際プログラムに関して研究されている小島レイリさんの発表は、2008年に「Japan! culture + hyper culture」を実施していたことを知っていたので、興味深く聴講しました。

ケネディ舞台芸術センターの事業内容は、プログラム部門と教育部門の2本柱で、プログラム部門の1つである国際プログラミング部の事業は、「エトセトラ・シリーズ」「国際フェスティバル」「作品委嘱」「オペラ」に分かれているそうです。Japan! culture + hypercultureは、単年で2~4週間に開催される国際フェスティバルの1つということでした。

国際フェスティバルは、ワシントンDCの人口分布を見直し、地域コミュニティに結びつきの強い国々、アフリカ、ラテン・アメリカ、アジアの3地域に関するものを企画にとりこんでいるそうです。その背景には「主な観客層だった白人エリート層の好みを反映する主催公演シリーズ(ヨーロッパからの伝統的な舞台芸術)だけではセンターとしての成長がとまってしまう」(セッションレジュメより)という危惧があり、新たな観客の開拓を目指す意図があるとのことでした。

個人的に面白いと感じたことは、国際フェスティバルでは、「舞台芸術」のセンターにもかかわらず、文学や美術、ファッション、料理なども取り上げていることです。札幌から戻り、センターのウェブサイトを見てみると、Japan! culture + hypercultureでは、レストランで日本料理の特別メニューが用意されたり、日本酒の試飲会も開かれてて、舞台芸術になじみがない人々でもさまざまな楽しみ方ができ、それをきっかけに劇場へも足を運んでもらえるような催事になっているように感じました。

午後○○時。
サミットの影響で警備が厳しいのではと思い、少し早めに空港に移動しました。
眼下に広がる北海道の景色を、名残惜しい気持ちで眺めながら帰路に着きました。
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美しいキャンパスの北海道大学。写真には写っていませんが、小川が流れています。こんなキャンパスに通いたかったです…

文責 くぼた
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by welcome-tpam | 2008-07-23 11:57 | Meet at TPAM
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